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仙台地方裁判所 昭和61年(わ)667号 判決 1987年1月13日

本店所在地

仙台市一番町一丁目一五番一一号

第一住設株式会社

(代表者代表取締役 阿部健一)

本籍

大阪市大淀区豊崎四丁目八番

住居

仙台市中倉一丁目一六番一-八〇八号

会社役員

戸島清重

昭和二三年三月三日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官總山哲、弁護人山岡文雄出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人第一住設株式会社を罰金二五〇〇万円に、被告人戸島清重を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人戸島清重に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人第一住設株式会社(以下、被告会社ともいう。)は、仙台市一番町一丁目一七番二六号幸ビル五階に本店を置き(昭和六一年七月一日、同市一番町一丁目一五番一一号大陽観光開発ビルに移転。)住宅設備機器製造販売業を営むもの、被告人戸島清重(以下、被告人戸島という。)は同会社の代表取締役(昭和六一年七月一二日辞任、同日阿部健一が就任し現在に至る。)として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人戸島は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を翌期へ繰延べ、架空仕入れや架空経費の計上、期末棚卸の除外等の方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五七年六月一日から昭和五八年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億三二八七万一七三〇円で、これに対する法人税額が五五〇〇万五九〇〇円であったにもかかわらず、同年五月三一日、仙台市中央四丁目五番二号所在の所轄仙台中税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六五九万七一四二円で、これに対する法人税額が一九七万九一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の同事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額五三〇二万六八〇〇円を免れ

第二  昭和五八年四月一日から昭和五九年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億六四四七万二七九六円で、これに対する法人税額が六七一九万九一〇〇円であったにもかかわらず、同年五月三一日、前記仙台中税務署において、同税務署長に対し、所得金額が八一一四万四一七二円で、これに対する法人税額が三二二〇万一三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の同事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額三四九九万七八〇〇円を免れ

第三  昭和五九年四月一日から昭和六〇年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億三一四九万一〇五六円で、これに対する法人税額が五五二六万八〇〇円であったにもかかわらず、同年五月三一日、前記仙台中税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一億一四六万七五一円で、これに対する法人税額が四二二五万七四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同会社の同事業年度の正規の法人税額と右申告税額との差額一三〇〇万三四〇〇円を免れ

たものである。

(右各年度分の所得金額の内容は、別紙1ないし3の各修正損益計算書に、税額計算は、同4の脱税額計算書にそれぞれ記載したとおりである。)

(証拠の標目)

判示全事実について

一  登記官渡辺芳弘作成の登記簿謄本

一  大蔵事務官作成の法人の異動(変更)届出書謄本

一  被告人戸島の当公判廷における供述

一  被告人戸島の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官(昭和六〇年一一月二〇日付、同月二一日付及び昭和六一年五月三〇日付)に対する各質問てん末書

一  被告人戸島作成の「札幌支店の売上について」と題する上申書及び「札幌支店の経費について」と題する上申書

一  小沢則昭(二通)及び門司和也の検察官に対する各供述調書

一  星野良久、加藤茂男(二通)の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  小沢則昭作成の「売上の繰延について」と題する上申書及び「旅費及び交際費の架空計上について」と題する上申書

一  大蔵事務官作成の受取利息調査書、「証拠物件の写について」と題する書面及び事業税認定損調査書

一  大蔵事務官作成の告発書

判示第一の事実について

一  被告会社の昭和五八年五月三一日付法人税確定申告書(謄本)及び昭和六一年六月二六日付修正申告書(昭和五七年度分、謄本)

一  税理士古山弘作成の「法人設立登記日から記帳開始前日までの期間(昭和57・6・1~57・6・30)の所得について」と題する上申書

一  門司和也作成の「スクラップ(アルミ廃材)売却収入除外について」と題する上申書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五七年度分)

判示第二及び第三の各事実について

一  小沢則昭作成の「修理代収入除外について」と題する上申書

一  門司和也作成の「架空仕入及架空外注加工費の計上について」と題する上申書及び「棚卸の除外について」と題する上申書

判示第二の事実について

一  被告会社の昭和五九年五月三一日付法人税確定申告書(謄本)及び昭和六一年六月二六日付修正申告書(昭和五八年度分、謄本)

一  被告人戸島作成の「簿外支出明細表」と題する上申書

一  門司和也作成の「昭和五八年度決算棚卸し金額の計上について」と題する上申書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五八年度分)

判示第三の事実について

一  被告会社の昭和六〇年五月三一日付法人税確定申告書(謄本)及び昭和六一年六月二六日付修正申告書(昭和五九年度分、謄本)

一  小沢則昭作成の「雑収入(貸倒債権取立分)除外について」と題する書面

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(昭和五九年度分)

(法令の適用)

被告会社の判示各所為は法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するが、判示各罪はいずれも免れた法人税の額が五〇〇万円をこえる場合であるから、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金二五〇〇万円に処する。

被告人戸島の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、各所定刑中いずれの罪についても懲役刑のみを選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑の法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

(量刑の理由)

本件は、被告会社の代表取締役として同会社の経営全般を統括していた被告人戸島が、業績が良好であったことから裏金をつくり、将来業績が下向した場合に備えようと考え、昭和五七年から昭和五九年までの三事業年度にわたり判示のとおり脱税し、その合計額は一億一〇二万八〇〇〇円に達したという事案である。その手段は売上や期末棚卸商品を除外し、架空仕入れを計上する等巧妙かつ計画的なものであり、脱漏所得分は裏預金、棚卸商品等として蓄えていた外、被告人戸島への貸付金、役員への裏賞与にあてるなどしていたもので、被告人戸島の個人的利得を図った面も窺われ、また脱税額が前記のとおり一億円を越える高額に及び、正規の申告所得に対する脱税の割合も第一年度は九六・四パーセントに及んでいることの外三年度の平均でも約五六・九パーセントと高いことを併せ考慮すると、被告会社及び被告人戸島の刑事責任は重いことが明らかである。

しかしながら、被告人戸島は、本件法人税違反の査察調査後とはいえ、自己の非を認め、被告会社につき昭和五七年ないし昭和五九年の各年度の脱税した法人税全額を含む本税合計一億二七六万六九〇〇円並びに重加算税合計二五六〇万二〇〇〇円を完納した外過少申告加算税及び延滞税並びに各種の法人道、県民税、事業税及び市民税等をもすべて完納したこと、被告人戸島は被告会社の現代表取締役阿部健一とともに今後は納税義務を誠実に履行する旨を誓うなど改悛の情も顕著であることなど被告人らに有利な事情も存するので、これらを斟酌し、主文のとおりの量刑をした。

(裁判長裁判官 小島健彦 裁判官 千葉勝郎 裁判官 山田和則)

別紙(1)

修正損益計算書

自 昭和57年6月1日

至 昭和58年3月31日

<省略>

別紙(2)

修正損益計算書

自 昭和58年4月1日

至 昭和59年3月31日

<省略>

修正損益計算書

自 昭和59年4月1日

至 昭和59年3月31日

<省略>

別紙(3)

修正損益計算書

自 昭和59年4月1日

至 昭和60年3月31日

<省略>

修正損益計算書

自 昭和59年4月1日

至 昭和60年3月31日

<省略>

別紙(4)

脱税額計算書

<省略>

<省略>

<省略>

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